高齢者にとって、転倒は大きな問題です。
転倒すると、骨折や頭部外傷などの重大なけがにつながり、介護が必要になったり、命に関わったりすることもあります。
実際、「令和元年国民生活基礎調査(厚生労働省)」によれば、高齢者の介護が必要となった主な原因の4番目は「骨折・転倒」であり、「令和3年人口動態統計(厚生労働省)」によれば、高齢者の転倒・転落・墜落による死亡者数は9,509人で、交通事故による死亡者数の4倍以上です。
では、高齢者の転倒事故はどこで起きているのでしょうか。
意外かもしれませんが、住み慣れた自宅で発生していることが多いのです。
東京消防庁によれば、およそ6割は自宅で転んでおり、具体的な場所は、居間・寝室、玄関、階段・廊下、浴室です。
こうした実態を知り、身近な場所に転倒リスクがあると意識しましょう。
では、自宅でできる簡単な転倒予防対策は何でしょうか。ここでは、各部屋ごとに注意点や工夫を紹介します。
【居間】
・コードの配線は歩く動線を避ける。壁をはわせるか、部屋の奥にまとめる
・引っ掛かりやすいカーペットやこたつ布団は使用しない。めくれやすいカーペットの下には滑り止めを敷く
・ 床に物を置かない
・1~2cmの段差はつまずきやすいので、スロープをつけるか、手すりをつける
【玄関】
・手すりをつける
・玄関マットの下には滑り止めを敷く
・ 靴の着脱のために椅子を置く
・上がりかまちが高い場合は踏み台を置く
【廊下・階段】
・手すりをつける
・床に物を置かない
・転倒の原因になる滑りやすい靴下やスリッパは使用しない
・足元がよく見えるよう照明を明るくする
・階段にすべり止めをつける
【ベッド】
・ベッドを壁に面するように配置し片方からの転落リスクをなくす
・ベッドガードと呼ばれる柵を利用する(※)
・万が一、転落しても衝撃が緩和できるよう低床のベッドに変更する
※ベッドガードを使用する際には、柵やベッドとのすき間に首や体の一部が挟まらないように注意してください。
【浴室】
・椅子に座って着替える
・入口の段差が高い場合は、すのこやスロープで段差を小さくする
・すべりにくい床材にするか、すべり止めマットを敷く
・手すりをつける
以上が、自宅でできる簡単な転倒予防対策です。これらの対策は、高齢者だけでなく、家族や介護者も一緒に行うことが大切です。また、日頃から適度な運動や栄養バランスの良い食事、十分な睡眠などで身体機能の維持・向上に努めましょう。
転倒予防は、高齢者の健康と安全にとって重要です。自宅でできる簡単な対策を実践して、快適で安心な生活を送りましょう。
《参考データ》
(1) 転倒予防・腰痛予防の取組 - 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000111055.html.
(2) たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こり .... https://gov-online.go.jp/useful/article/202106/2.html.
(3) 職場のあんぜんサイト:STOP! 転倒災害プロジェクト - mhlw.go.jp. https://anzeninfo.mhlw.go.jp/information/tentou1501.html.